「小犬の信仰」 マタイ福音書15章21-28節 |
しかし、よく分からないけどこの箇所で確かに言えることがいくつかある。それはイエス様がこの女性の行動を「あなたの信仰は立派(この上なく大きい)だ」と言われたことだ。この女性は主イエスが自分を拒んでいるように思える態度にもかかわらず、初めから一貫して、イエスに対して「主よ」と呼びかけ続けたのである! そうして、イエス様は「イスラエルの家の失われたところに遣わされている」というご自身の使命を変更して、この女性の願いを聞き入れたのだ。彼女の振る舞いは、主イエスの予定を変え、行動も変えてしまったのだ。
『祈りの精神』の中で著者のフォーサイスは「ねばり強い祈り」という項目を設けている。彼は「われわれの祈りは『御心がなりますように』ということばでいつも終わるかもしれない。しかし、そのことばで始める必要はない。キリストが執拗な祈りを強調されたことを記憶すべきである」と指摘する。そしてねばり強い祈りは「神の意志にまで影響を与えたという実感に至る」祈りであると記す。神の意志にまで影響を与えるまでねばり強く祈る「格闘的祈り」こそが「祈りの精神」の重要なことなのだ。
カナン人の女性のイエス様に対する姿は、まさにこの「格闘的祈り」の姿勢を私たちに教えてくれる。カナン人の女性の主イエスに対するまっすぐな信頼は、ついにイエス様の考えと行動を変えた。それはまさに神の意志にまで影響を与えた祈りに他ならない。
私にもカナン人の女性が直面していたように、もう自分では解決を見出せない重荷を背負うことがある。主に祈りをささげても主の声が聞こえず祈りが届いているのか疑問に思うことがある。カナン人の女性が、イエス様に拒絶されるような対応をされたように、まったく期待していない答えに聞こえるような時が私たちにもある。「主よ」と呼びかけることを忘れてしまうことが、いや、「主よ」などと呼びかけたくなくなる時さえある。しかし、「あなたの信仰は立派だ」と主イエスに言われた一人の女性は、どのような時でも、ひたすらに「主よ」と呼び続けたのであった。ここに私たちの信仰の、祈りの鍵がある。